起業前9:「自由」と「孤独」

いよいよウルトラクイズロケ隊は、サウスダコタ州という日本人がほぼいないエリアに入っていった。そこには、テレビで見たことのある4大統領の巨大な顔が壁面に刻まれているマウントラッシュモア。

ヒッチコック監督の映画「北北西に進路を取れ」の決闘シーンの舞台になった場所。私は休日になると1日で3-5本も映画(特に1960年代)を観たりしたので、この迫力を直で見た時のインパクトは大きかった。

この製作者が一番苦労したのは、各大統領の「眼差し」らしい。初代の大統領ジョージワシントンの眼差しは深く優しい、トーマスジェファーソンは未来を見る眼差し。この迫力を体験できるありがたさ、この景色を目に焼き付けよう、私は目を閉じた。

「口が開いたまんまだぞ」と意地悪く言う日テレスタッフの声で、ハッと我にかえる。

他人からは、ただのバカに見えていたらしい。他の挑戦者たちを見てごらんと言われて振り向くと、「知力」にあふれたみんなは、クイズ談義に夢中だった。

山から下ると、本当に小さな田舎町で本当になにもない。挑戦者の何人かでどんなものが売っているのか、スーパーに行ってみた。すると

「なんでこんなところに日本人がいるの!?」と女性の声で日本語が聞こえた。

後ろを振り向くと、ソバージュで小さくて可愛らしい女性が立っていた。他の挑戦者がアメリカ横断ウルトラクイズという番組で来ているというと、彼女はこんな田舎にと目を丸くしていた。

そして、本土では各チェックポイントで一人ずつ落ちて、一人で帰国させられるのだと言うと「なんて、残酷な番組なの」と肩をすぼめた。それはもうアメリカ人の仕草だった。

そんな彼女をみて私は素敵と思った。彼女は日本人がいない場所に留学したくて、ここへきたという。私はお金を貯めて留学したいのだと言うと、彼女は家に遊びにおいでよ、どんな生活をしているのか見せてくれると言う。

他の挑戦者と一緒に彼女の家を訪ねる。クイズの移動の時間がない中で初めて見るアメリカのおうち。木目と白でできている彼女の家は、こじんまりとしていて無駄なものがない。その空間は心地よくて、なにより私が求めているもの、「自由」を感じた。

短い時間だったけど、会話は弾んでたくさん笑って、私たちは彼女の家を後にした。

一緒に行った男性挑戦者は「こんな田舎で、一人で家に住んですごいなぁ」「もしかして寂しいから僕らに声をかけたのかな」と言っていた。

「自由」を手にする人は「孤独」も同時に受け入れている。

移動の日、彼女はしばらく日本食を食べてないでしょ、と「おにぎり」をたくさん作って来てくれた。そしてアメリカ流にハグしてくれて、彼女からは日本人があまりつけない香水の香りがした。こんな人と出会い、触れ合えた時間がとても大切に思えた。

改めて私は、再び近い未来にアメリカに戻るぞと、決意を強くした。

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● わかな語録:孤独は自分との対話のチャンス

◆ 続きはこちら 起業前10話:涙の帰国

◆ 最初から読みたい方はこちら↓

起業前1話:バブル時代、ある目的のために給料で「銀座証券レディ」の道を選ぶ

● 番外編:アメリカのマウントラッシュモアの構想は、カンボジアの伝説の王様(12世紀)が建立したアンコールトムからヒントをえたんじゃないかと、私は勝手に思っている。。こんな四面塔が50 以上建っていて、その顔の長さ3m。世界になかなか類を見ないと思う。

ちなみにマウントラッシュモアの大統領たちの鼻の長さは6mくらいらしい。

宇宙の中心、神々が降臨する場所と言われている。

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