あ゛〜、と叫び椅子から立ち上がる。
出店直前なのに日本に帰国した私は、
イヤな汗をかいている。
東京の連日の猛暑のせいではない。
ウチの救世主が立てた無茶な出店計画のせいだ。
お金の計算して、汗がドッとでる。
気がつけば、家の中をグルグル回ったり
右往左往している自分に、
落ち着け、落ち着けと言い聞かせる。
思えば先月、カンボジアでウチの救世主は、
アポイントを取ってという。
理由を聞くと年内にさらに2店舗だせと言う。
「は?」
私は寝不足で目の下にクマが
できたまま、聞き返す。
年内に2店舗ですか?
ま、まさか7月空港に出す2店舗以外に?
「温井さん、ボクを使うならこれくらいは覚悟してよ」
、、、結果、そのアポイントから交渉が始まり、
年内に出す2店舗が決まった。
空港出店準備のの忙しい最中に、だ。。
つまり今年だけで出店4店舗よ。
誰かウチの救世主を止めてくれ。
日本で連日、ウチの救世主と商品開発のミキと
3人で打合せする。
土建屋仕込みの私と救世主だけだと、大きな争いになるので
最近は、いつもこの3人だ。
そんなある日、救世主は打合せ中に突然言った。
「急遽アフリカに行くことになった」
「え!?」
空耳だよね、この時期にまさか。。
カンボジアの出店工事に立ち会ってくれると
いってたのにどうするのよ!?
「ダイジョーブ」と救世主。
アフリカから戻ったら
その翌日からカンボジアに行くと言う。
そんな無茶な。
さらに驚くべきはアフリカから帰国した日の早朝にバングラデシュから荷物が届き、
その受け入れにも立ちあわねばと言う。
唖然としている私たちを日本に置いて、
救世主はサッサとアフリカに行ってしまった。。
マジか!?
置き去りにされた私は、商品開発のミキと唖然としながら、
新しいパッケージの最終稿のチェックをする。
カンボジアで主催したデザインコンテストの
受賞作品を日本のプロのデザイナーが
パッケージにそれはステキに入れてくれた。
さすが大手広告代理店出身、ミキの
クリエイティブマネジメント力に感心する。
改めてパッケージデザインを眺める。
大きく頷く。素晴らしい。
私のテンションは、急上昇。
しばし楽しく平和な時間が訪れた。
しかし、間違いが見つかり、またもや汗。
最終入稿前で良かった。コワイコワイ。
そんなで最近は、毎日ドキドキしている。
ミキの広告代理店時代の的確な赤入れや、
商品開発の経験値に助けられて、着々と進む。
充実した打ち合わせを終えて、一人になった私は
もう一度、出店のお金の計算してみる。
うむむ、やはりかなりツラい。
「今月の二つの空港に店舗出店する
だけでも無謀なのに、、、
さらに年内にもう2店舗出店するなんて。
無理よ、ムリ。」
と、自分の中の弱音ちゃんが首を振る。
「昨年の廃人だった自分を思えば、
もう全てを失うことも怖くないんだからさ、
GOGO! こんな資金繰りくらいやろうよ。
何年経営者やってきたのさ」と
自分の中のイケイケ姉ちゃんが言う。
「いやよ、結構なリスクよ」と弱音ちゃん。
「リスクとってなんぼじゃ!」とイケイケ姉。
結果、イケイケ姉が勝った。
出店まであと21日。
私は今、日本にいる場合じゃないと思いながら、
遠いアフリカにいる救世主を思う。
やることは山積みだけど、救世主がいないうちにちょっとだけ、多めに寝ておこう。
今月、カンボジア入りしたら戦場だろうな。
また救世主が「ノーッ」と言って
怒鳴らないといいけど。
いや、今は何も考えるまい。
目の前の仕事を一つ一つやろう。
頑張れ、ワタシ。