救世主の教え「全ては疑ってかかれ」

救世主が一足先に帰国する日となった。
彼は飛行機の時間ギリギリまで
過酷なスケジュールを詰め込んでいる。

「温井さんは、すぐにダマされるんだから」
なんでも信じてしまう私に救世主は、厳しい。
私はダマされたことなどない、はず。

数日に渡って資材探しをしているが
最終日も資材探しだ。
カンボジアの灼熱の日差しの中、
救世主と棚の素材を探しに行く。
1円でも安く店舗什器を作るために。

私は、そんなの工事会社に頼めば
いーじゃないかと安易に思うのだが、
救世主は資材選びが全体のコストを
抑えるのに、とても大切だという。

面倒くさがりやの私としては、
資材探しは、できれば行きたくない。
しかし、、資金的余裕はない。

木材屋をまわる。目をのガードとマスクはコロナより木屑よけ。

資材屋に入るなり、救世主は
相変わらず、相手の説明など聞きもせずに
彼の聞きたいことだけを矢継ぎ早に聞く。

「これは何の木?」
「いくら?」
「800ドル」(=およそ10万円)
「ノーッ!!」
救世主は、いつもこの一言だけは英語だ。

こんなの400ドル以下が相場だという。
救世主の頭の中には、店で使う様々な素材の
相場を記憶しているそうだ。

金額を調べる時間がもったいないから
片っ端から覚えたという。
・・・見習おう。

救世主は800ドルと言った木材屋で
「コイツ、怪しいから」
と言い捨てて、新たな店へ行く。

後からその怪しい木材屋からの連絡があり
「さっきのは300ドルでいいよ」

なんとまぁ、半額以下になるとは。
「ノーッ!!」も使いようだ。

救世主と私はアポからアポへ、目まぐるしく動いて
夕方、私は、空港に向かう救世主を見送った。

「ありがとうございました。お気をつけて!」

・・・・はーっ、救世主が帰った。
もちろん、救世主に感謝しかない。
しかし、なんだろうか、この解放感は。

開放感を味わえた久しぶりの夜

その晩、私とミキは堂々とレストランを予約し乾杯をする。なんとも清々しい。

今までの数々の軌跡の話に花が咲き、
はっと携帯を見ると着信マークが。
複数回、救世主からの着信だった。

空港行く途中に何かあったかと折り返すが
救世主はもう出ない。
まぁ、連絡ないのはどうにかなったのだろう。

翌日、救世主に連絡すると
空港行く途中、雨がひどくなり
渋滞でピクリとも動かなかったという。
飛行機に間に合わないので、スーツケースを
担いで、雨の中、空港まで走ったという。
それも30分。

雨の中スーツケースを抱え走る救世主。
・・・・くっくっと笑いを堪えて
大変でしたねー、という。

更に、飛行機が遅れて、タイ経由での
乗り換えで、空港ゲートに降りずに
飛行機から飛行機へ走ったらしい。

過激な人には、過激な環境が与えられる。

私は、穏やかに平和に進もう。
神様、穏やかな環境をお願いします。

さぁ、明日からシェムリアップ。
アンコールパワーを浴びて、仕事しよう。

2店舗同時出店まで、あと1ヶ月を切った。

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